日頃、革小物製作を手掛けていますが今回は住宅内の革張りドアの要望を頂きましたので第2弾として紹介します。(以前に書いた記事は下記リンクからご覧ください)
少し前に紹介しました都内の有る芸能人邸の「リフォーム」を進める上で、室内のドアを「革張りにしたい」という依頼です。
昨年越前市「千年未来工芸祭」に弊社も出展していた時、東京在住の会社の方が弊社の革製品に興味を示され?今回の「住宅リフォーム」に関するご要望に繋がって来たようです。
芸能人と言いう事も有り少々気になって「芸能人ご本人」のお名前をお聞きしましたが、「明らかに出来ません」と言う事でした。
※発注書には「石井邸」とだけ記されていました。
※特に芸能人の方はプライベート情報をオープンしませんね。
その後は想像しながらどんな芸能人の方かな、芸能人で石井?沢山おられます、余りしつこく探りを入れても如何なものかな?と言う事でご指定の内容通り作業を進める事にしました。
超大型サイズのドア
たぶん「リビングルーム」の出入り口と想像しますが、余りにも大きく やはり芸能人の求めるご依頼は一般の住宅とは比較にならないなと感じます。
ドアサイズが「高さ240㎝ 幅97㎝」とバカデカです。
※通常ドアサイズ:185㎝x80㎝程度(我が家の場合)
「下地用」に使用の合板(厚み12㎜)の重さが1枚約15㎏有り、2枚使用します。
また使用する革の重量は合計15㎏以上となります、合板との合計約45㎏前後となります。
※ちなみに2枚のドアに使用する革は「牛5頭分」になります。
作業するにも、チョット動かすだけでも、大きくて、重くて、大変な作業となっています。
お客様には事前に30cm角のサンプルを提示し、その中から1点の色を指定されてきました。
※30㎝角サンプル品
上記の中から左端の「濃いブラウン色(DBR)」をお決めになり正式発注を頂きました。(落ち着いた表面特殊加工のダークブラン色です)
ここからが大変、初体験の仕事でもあり失敗は許されない仕事でもあり、完成後 納品時お客様に「喜ばれて初めて完成」です。
ここから先の作業の流れに関しては「ブログ」で伝わり難いと思います、悪しからず。
作業工程
設計段階でご指定の「ドアのサイズ」に革ベルト状にしたものが縦と横に編み込み全体にバランス良く「ミリ単位」で収まるか否かが重要。
97㎝のドア幅で240㎝の高さに50㎜のベルトを何本入れるか?何ミリの隙間を開ければキッチリ納まるか?が作業前の重要な計算でもあります。
同じように240㎝の縦方向(高さ)に対し何本入れ、隙間を如何するか?計算通りに作業を進められるか?全体にバランス良く無駄な隙間なく綺麗に編み込めるかを考えていると作業終了まで十分な睡眠がとれませんでした^^。
基本計算では「革の厚み分を隙間」と計算します、計算通りの隙間を作り作業できるかが大問題。
まず、革ベルトの製作開始です、社内の自動裁断機が活躍です。
自動裁断機(CAM)にてご指定の「革幅」になるよう革と、芯材を同様にカットします。
芯材に革を巻き付ける作業が大変で、革メーカの社長にお願いし専用機(革の両サイドを曲げる専用機を活用します)でベルト状に仕上げて行きます。
繰り返しですが、牛5頭分の革を50㎜幅のベルト状にする事は重さも数量も半端なく、ベルト数は1,5mの長さで180本以上確保します。
※写真はベルト状に試作して革幅を確認した所
依頼していた革メーカからベルト状になって部材が入荷。
手前のサンプル通りに、またそれ以上綺麗に仕上げる事が私に与えられた仕事になります。
ベルト状に革を編み込む前に、前準備がまだあります。
合板にまず3㎜の難燃性のウレタンを接着します(特殊ウレタンは住宅と言う事を考慮し、防火対策に少しでもお役に立てればと言う私の配慮です)
これで編み込み作業の事前準備完了です。
緊張が走ります、編み込み開始です、ミスが許されません。
最初の1本が基準となり計算上の隙間を確保し、更にゆがみが無きよう1本ずつ進める集中力と根気のいる作業です(老体には不向きな作業です^^)
このサイズの物が2枚あります、ドアの「表と裏」分です。
1日終了時に1枚の半分程度(全体の1/4)まで進み、ここまでは計算通り進めました。
昔から言われた言葉を思い出します「段取り八分」と言う言葉です。
一つの事を完成させるには事前段取りが重要で「八分=80%」が準備作業と考えて「準備に万全を期す」と言うことわざです。
正に今回は段取り八分より90%だったかも知れません、それほど何度も何度も繰り返し頭の中で「シミュレーション」しました。
ようやく完成しました、一人で作業するにはドア サイズが大き過ぎ、作業の助けが必要で、編み込み作業はスタッフの女性に助けられ無事終了しました、しかし納品、出荷前に東京から依頼先のデザイン事務所の方が急きょ「出荷前確認」に来られると言う事となり梱包前で終了です。
梱包方法も通常梱包と異なり、運送時のトラブル防止を考慮し、
発泡スチロールで箱を作り、更にダンボールで包み込み無事お客様宅まで移動できるよう万全の配慮をしたつもりです
今後は無事予定通り「リフォーム」が完成される事を願って終了です。
※自己満足で綺麗に完成したつもりで記念写真。写真で改めて見ると本当に大きなドアができました。