今回の製作工程シリーズは「袱紗」です。
生活する上で、親戚、お仕事関係、お友達や、お隣様、町内会など様々なお付き合いが生じています。
その中で「お祝」や「お見舞い」など金銭の受け渡しが、時と場合により発生します。
子供や孫に対する「お年玉」や「お小遣い」に関しては「ポチ袋」など簡単な包みで賄っています。
しかし大人のお付き合いとなればお金をむき出しに出す事はありません、それぞれ専用の「包」等にお金を入れてお渡ししております。
日本には色々しきたり的な事が有り、おめでたい時、悲しい時など状況に応じて包の色が変わり、「包」に入れるお金の種類、入れ方まで作法が有り渡し方が異なります。
色々なお付き合いで「お通夜」に行く事も多く、受付に於いてお渡ししている様子を窺うと以外にも「包」を内ポケットからサッと出され受付担当の方に片手でお渡ししている事が有ります。
日本独特の作法が有ると言いましたが、作法と言うまでも有りませんが、包はむき出しで持ち歩く事でなく別なものにそっと挟みこみお渡しする直前に包を取り出し両手にてお渡しする事が素敵です。
ご年配の方々が「西陣織」らしき素晴らしい布製の「袱紗」から包を取り出している様子も多く見ています。
「袱紗」と言う名称をお若い方は初めて耳にしたと言う方もいます。
私が「袱紗」(ふくさ)を手掛けたのがこの様子を多く見るようになって「革製袱紗」を製作するキッカケとなって行きます。
自家用で布製の物は有りますが、これを革製で造れないかと言う思いから試行錯誤しサイズを含め現状の形を完成させました。
特に「袱紗」のサイズを決定する時、水引が付いた「包」は大小様々で、包に入れる金額によりその水引の派手さが異なっている。
写真のような簡単なものから、「鶴」や「亀」などをイメージした大変芸術的なものまで多種多様なものが販売されています。
そんな包を入れる「袱紗」を万能サイズにすると、とても大きいサイズにして更に厚みを出す必要が有り躊躇します、一般的な包みを入れるサイズを決めて、今回の革製「袱紗」を決定しました。
※販売店の「包」販売コーナから、写真の3倍程度の大きなスペースで多種多様な物が展示販売されています。
袱紗製作工程
革の選定
全ての革製品製作で同じく革の選定から進めます。
キズ・汚れ、余分な皴の無い部分を選定します、袱紗に使用する革サイズは意外に大きく、端材とは言い難い「ギリギリ・サイズ」になります。
選別革サイズは「250㎜x400㎜」で更に汚れや傷、腹革を避けて選定する場合取れる数量は限定的となります、大量注文が無い事が幸いしています(笑)
革色も気になります、派手な色は不向きで落ち着いた色を主に選定しています(黒やダークブラン系など)
刻印
革に刻印する作業としては、革をカットした時点で行う方がミスを防ぐことが出来る為、この時点で刻印を行います。
マグネットで固定
準備するパーツは写真のように「革・芯材・裏側用布地」更にマグネットを使用し出し入れ口部分をマグネットにて固定します。
※心材の先端に空いてある穴にマグネットを接着します。
余談ですが、マグネットを接着する際にマグネットの「+と-」を間違えないよう注意を払います、(接着後同じ「極」になり反発し合う事が無いよう要注意です)
僅かФ12㎜程度のサイズで厚みも1㎜程度の小さなマグネットの強度が半端なく強く作業前に2枚がくっついてしまえば、取はがすのに一苦労する強力な磁力を持っています。
革剥き
革の周囲を1センチ程度折り曲げするときに必要な革の厚みにする為、まず「革剝き」工程を行います。
この作業は気を使う作業で「革剝き機」の機械設定で革の厚みが決まります。
約0.3~0.4㎜に設定します。
革が薄過ぎれば革の強度に影響し、厚過ぎれば、折り曲げ作業が綺麗にならないと言う微妙さが有ります。
※四辺の革を剥いた一例
パーツなど準備作業が終了すると、革に芯材を接着し、更にマグネットをプラス、マイナスを間違いないよう、慎重に接着します。
革周囲の折曲げ作業は指先に神経を集中し、より綺麗な折曲げを意識し仕上げて行きます、ここで均等な折曲げが出来なければ商品仕上げに影響します。
接着最後は、裏側の布地を折り曲げた革の端から飛び出ない様、また引っ込み過ぎない様慎重な作業となります。
これでほぼ90%完成となり残すは周囲のステッチ縫製を行い完成となります。
「袱紗」は製作作業としては比較的短時間で出来上がる商品の一つでもあります。